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キングカメハメハ 〜史上初の変則2冠。産駒は芝・砂問わず。日本競馬史に残る異質な存在〜

text by 中西友馬

キングカメハメハ(King Kamehameha)

NHKマイルC・日本ダービーの“変則2冠”を日本競馬史上初めて達成したキングカメハメハの異質さは際立っている。競走生活はわずか8戦ながらも、そのオールマイティぶりは産駒にも受け継がれ、この馬の強さを証明した。偉大な大王の馬生を振り返る。

KingKamehameha

プロフィール

性別 牡馬
Kingmambo
マンファス
生年月日 2001年3月20日
馬主 金子真人
調教師 松田国英
生産牧場 ノーザンファーム
通算成績 8戦7勝【7-0-1-0】
獲得賞金 4億2973万円
主な勝ち鞍 東京優駿(2004年)
NHKマイルカップ(2004年)
受賞歴 最優秀3歳牡馬(2004年)
産駒成績 産駒デビュー年:2008年
通算重賞勝利数:141勝(歴代3位)
通算G1勝利数:25勝(歴代3位)
代表産駒 アパパネ(2010年牝馬3冠)
ロードカナロア(2012、2013年スプリンターズS)
ホッコータルマエ(2014年チャンピオンズC)

変則2冠制覇のカメハメハ大王

 キングカメハメハは、2003年11月に京都競馬場でデビューした。父は凱旋門賞2着馬エルコンドルパサーの父でもあるKingmambo、母マンファスはイギリスで走った馬であったが、現役時代は特に目立つ成績を残した馬ではなかった。レースは中団追走から抜け出しての勝利。決して派手な勝ち方ではなかったが、センスの良さが光るレースぶりであった。

 2戦目のエリカ賞も、着差こそ半馬身差しかなかったが、余裕のある走りで連勝を飾った。

 年が明けて3歳となったキングカメハメハは、京成杯で重賞に挑戦する。しかし、荒れた芝に脚を取られたのか伸びを欠き、キャリア唯一の敗戦となる3着に敗れた。続くすみれSは初の道悪でのレースとなるが、好位から抜け出して快勝した。

 そして再度の重賞挑戦となった毎日杯。1番人気こそ2戦2勝の外国産馬シェルゲームに譲ったが、シェルゲームより1キロ重い57キロを背負いながら、2馬身半突き放しての快勝。重賞初制覇を飾った。

 重賞ウイナーとなったキングカメハメハは、G1に挑戦することとなる。中山の京成杯で敗れていることもあり、同じコースで行われる牡馬3冠第1戦の皐月賞は回避。初距離の1600mであっても、東京コースで行われるNHKマイルCに照準を定めた。人気は混戦模様であったが、マイル重賞を勝っているシーキングザダイヤやメイショウボーラー、コスモサンビームを抑えて、中距離しか走ったことのないキングカメハメハが1番人気に推されていた。レースは、初のマイル戦でこれまでと比べて後ろの位置取りとなったが、直線は馬場の真ん中を1頭違う脚で伸びて5馬身差の圧勝であった。

 続く東京優駿(日本ダービー)でも、皐月賞組のダイワメジャーやコスモバルクを抑え、1番人気に推されたキングカメハメハ。レースは1000m通過57秒6という超ハイペースで進み、レース上がりが35秒9という消耗戦となった。この流れを中団追走から早めに先頭に立って押し切るという、強い競馬内容で変則2冠を達成した。勝ちタイムは当時のレースレコードを2秒も更新する、2分23秒3という驚異的なものであった。

 夏を経て、断然人気に推された神戸新聞杯を快勝すると、次走は3歳同士の菊花賞ではなく、古馬との初対決となる天皇賞(秋)に向かうことが発表された。しかしその調整過程で屈腱炎を発症し、電撃引退。わずか8戦というキャリアで、ターフを去ることとなった。

 引退後は種牡馬生活がスタート。初年度産駒からフィフスペトルが函館2歳Sを制すと、2世代目には、父母ともに金子オーナーの所有馬同士という夢の配合で誕生したアパパネが、牝馬3冠を達成した。その後も芝・ダート、短距離・長距離問わず活躍馬を輩出し、産駒通算勝利数は歴代3位の2210勝(2023年末現在)をマークしている。2019年に種牡馬引退が発表され、同年8月に天国へと旅立ったが、これから先もキンカメの血は脈々と受け継がれていく。

(文●中西友馬)

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