HOME » 予想情報 » 【GⅠトレンドハンター皐月賞編】クロワデュノールで間違いないのか…ラップとキャリア両面から考察

【GⅠトレンドハンター皐月賞編】クロワデュノールで間違いないのか…ラップとキャリア両面から考察

text by 勝木淳

重賞レースのデータ分析では過去10年が一般的だが、競馬のサイクルは短く、10年前の結果は現在と大きく異なることも多い。近年はローテーションも変化し、GⅠ戦線のトレンドが進化している。今回は、皐月賞の傾向をライターでGⅠトレンドハンターである勝木淳氏(@jamjam_katsuki)が考察する。

CroixduNord
ホープフルSを制したクロワデュノール

ラップから考える皐月賞

 牡牝クラシック第一冠はトレンドの縮図のようだ。2歳のうちに実績を築き、年明けはトライアルで本番の舞台を試走し、いよいよ迎える三冠初戦。そんなかつての常識がこれほど遠い昔のことに思えるレースはほかにない。

 2歳で賞金を稼げば、本番までレースに出走しない。コース経験はいらない。実力さえあれば、乗りきれる。完成手前の若駒は経験と同時に疲労も重なる。疲れはケガの最大の要因。人間も馬もアスリートの注意事項は同じ。追い詰めて追い込んで鍛えて強くする。そんな育成方法はリスクが高すぎる。

 クラシック至上主義ともいわれるが、その真意は無理をさせないことで、その先も視野に入れた長期的ビジョンゆえの育成メソッドでもある。クラシックを獲るチャンスはモノにしたいが、その弊害はできるだけ取り除きたい。レース数を絞った臨戦過程にはそんな願いも透けてくる。

 皐月賞のポイントは前年暮れのホープフルS。2017年GⅠ昇格後は翌年皐月賞と同舞台であることから、ここで実力を査定する意味合いが強い。コントレイルもホープフルSでの首をぎこちなく使うコーナーリングからその課題を明確にし、春に向けて修正が施された。

 直近5年で前走ホープフルSは[1-0-0-3]。1番人気1着なら[1-0-0-1]。コントレイルが勝ち、牝馬レガレイラが敗れた。このホープフルSからの直行こそ、上記ローテーション革命の象徴だろう。今年はクロワデュノールが挑む。新馬、東スポ杯、ホープフルSの3連勝はコントレイルとうりふたつ。皐月賞突破なら三冠すらみえてくる。

Satsukishou_rap
過去5年皐月賞ラップ

 だが、コントレイルの皐月賞は前後半1000m[59.8-60.9]のイーブン。6ハロン目に12.9が入っており、皐月賞としてはスローに近い。ホープフルSに近くゆったりとした流れだったのは、コントレイルにとって優しかった。一方で、皐月賞はハイペースも多い。まだまだ気性的に弱さを残す若駒同士による中山芝2000mのフルゲートという設定は序盤から飛ばす競馬にもなりやすい。末脚勝負は分が悪く、であれば、行けるだけ行って持久戦に持ち込み、序盤のリードを短い直線で活かしたい。そんな心理になりやすい。

 2年前は重馬場で1000m通過58.5を記録し、ラストは[12.7-12.5-12.0]と加速力が問われない厳しい流れになり、ソールオリエンスの追い込みが決まった。昨年はメイショウタバルが飛ばし、57.5と突っ込み、後半は[12.0-12.1-11.7-12.0]と持続力勝負になり、スピードと持続力を武器とするジャスティンミラノが抜け出した。マイルっぽい息を入れにくい展開も皐月賞の特徴だ。

 序盤から守りに入らず、果敢に攻めていけるスピード志向が躍動する。この手の流れになると、スローが多いホープフルSは結びつきが弱まる。スピード寄りの皐月賞で躍り出るのが前走共同通信杯[3-0-3-7]。東京芝1800mで問われるスピードが皐月賞に合う。1、2着は[3-0-2-4]。東京をこなす速力が威力を発揮する。だが、今年のホープフルSと皐月賞は相関関係ではないか。

2024年ホープフルS クロワデュノール(7-7-4-3)2.00.5
[12.6-11.1-12.3-12.7-12.7-12.0-11.6-11.7-11.9-11.9] 前後半1000m[61.4-59.1]

 スローはスローでも、ファウストラーゼンが大まくりを打ち、残り1000mからペースアップ。ラスト800mすべて11秒台のロングスパート合戦だった。単にスローの瞬発力勝負ではない。おまけにまくって動かしたファウストラーゼンは弥生賞ディープインパクト記念でも同じスタイルを貫き、重賞初制覇。優先権を獲得し、皐月賞に出走する。状況はまるでホープフルSと同じ。

 本番は飛ばしそうな馬不在のスローだが、ファウストラーゼンがまくり、好位ピコチャンブラックがスプリングSと同じく反応して動けば、クロワデュノールの思う壺。ファウストラーゼンが枠順や周囲のマークによって身動きできない場面を想定できるも、クロワデュノール優位は動かない。共同通信杯組が躍動するようなスピード競馬にならない公算が高く、予想出発地点はホープフルSで動かない。

1 2