HOME » セレクト » 皐月賞前にベテラン!? キャリア豊富な皐月賞馬(4)ひっくり返った低評価…10戦目で完全開花した善戦マン

皐月賞前にベテラン!? キャリア豊富な皐月賞馬(4)ひっくり返った低評価…10戦目で完全開花した善戦マン

text by 小早川涼風

最近のクラシック戦線でよく聞く言葉のひとつに“本番直行”がある。これは2歳G1などに出走した馬が、トライアルレースを挟まずに一冠目のレースへ挑むことを指す。近年はこのローテーションの馬が増加し、キャリアの浅い馬が一冠目を制することも多い。逆に、本番までに多くのキャリアを積み重ね、一冠目を奪取した馬はどれほどいるのだろうか。今回は皐月賞が8戦目以上の馬の中から、5頭をピックアップして紹介する。今回は4頭目。

MeishoSamson
第66回皐月賞を制した時のメイショウサムソン

④2006年 メイショウサムソン(皐月賞は10戦目)

 ナリタブライアン以来となる10戦目の皐月賞制覇を遂げたメイショウサムソン。だが、この時点で「怪物」との評価が名高かった先輩とは違い、メイショウサムソンはどこか「善戦マン」という見方が強かった。

 この年の皐月賞で人気を集めていたアドマイヤムーンやフサイチジャンクはどれも良血馬。加えて前哨戦の勝ち方も強烈で、本番に向けてのパフォーマンスは十分すぎるほどだったことが、その人気に拍車をかけていた。

 一方、デビューから9戦し、着外はたった1度という安定感はありながらも、条件戦を勝ち上がるまでに3戦を要したメイショウサムソン。スプリングSは勝ったものの着差はわずかで、前述の2頭に比べるとやはり地味なものだった。そのためメイショウサムソンの人気は、前哨戦を勝ったにもかかわらず6番人気と、決して高いものではない。ここも良くて複勝圏くらいまでか……という考えのファンは多かっただろう。だが、その評価はレースが終わった後にひっくり返る。

 レースは1000m通過が1分ジャストという平均ペースでよどみなく進んでいく。好位5番手あたりにつけたメイショウサムソンは4コーナーで外に持ち出されると、抜け出していたフサイチリシャールを捉え、後続との差を広げていった。その走りに、これまでのレースのような甘さはない。ただ1頭、内から突っ込んできたドリームパスポートがいたが、最後まで前は譲らずに1着。デビュー時から「素質がある」と感じていた鞍上の期待に応え、人馬ともにG1初制覇を成し遂げた。

 先行して勝ち切るというスタイルは地味に映ることが多い。だが、この戦法は真に強い馬しか成し得ない作戦でもあるのではないだろうか。皐月賞の後ダービーを制覇し、史上4頭目となる天皇賞の春秋連覇を達成したメイショウサムソンの強さの原点は、10戦目を迎えたこのレースで完全に開花した──そんな風にも考えられる皐月賞であった。

【了】

(文●小早川涼風

【関連記事】
皐月賞前にベテラン!? キャリア豊富な皐月賞馬(1)
皐月賞前にベテラン!? キャリア豊富な皐月賞馬(5)
皐月賞前にベテラン!? キャリア豊富な皐月賞馬(全紹介)