HOME » コラム » レジェンドホース名鑑 » ディープインパクト ~不朽の光を放つ日本競馬史上最も偉大な一頭~

ディープインパクト ~不朽の光を放つ日本競馬史上最も偉大な一頭~

text by 中西友馬

ディープインパクト(Deep Impact)

デビューから7連勝で無敗の3冠を達成した日本競馬界屈指の名馬。その圧倒的な走りは、レジェンド・武豊をして「空を飛んでいる」と言わしめた。引退後も種牡馬として父サンデーサイレンスを超える産駒通算勝利数を記録したほかにも、欧州でもディープの血を継ぐ馬が活躍し、死してなお世界にその名を知らしめている。日本競馬史上最も偉大な一頭の軌跡を振り返る。

Deepimpact

プロフィール

性別 牡馬
サンデーサイレンス
ウインドインハーヘア
生年月日 2002年3月25日
馬主 金子真人ホールディングス
調教師 池江泰郎
生産牧場 ノーザンファーム
通算成績 14戦12勝【12-1-0-1】
獲得賞金 14億5455万円
主な勝ち鞍 牡馬3冠(2005年)
ジャパンカップ(2006年)
有馬記念(2006年)
受賞歴 JRA賞年度代表馬(2005、2006年)
最優秀3歳牡馬(2005年)
最優秀4歳以上牡馬(2006年)
顕彰馬(2008年)
産駒成績 産駒デビュー年:2010年
通算重賞勝利数:293勝(歴代2位)
通算G1勝利数:72勝(歴代1位)
代表産駒 ジェンティルドンナ(2012年牝馬三冠)
コントレイル(2020年牡馬三冠)
グランアレグリア(2021年マイルCS)

日本近代競馬の結晶が与えた衝撃

 ディープインパクトは2004年12月に阪神競馬場でデビューした。父は時代を席巻していたサンデーサイレンス、母は初仔を受胎した状態でドイツG1を制覇したウインドインハーヘアという良血馬であった。さらに鞍上は前年204勝を挙げた武豊ということで、デビュー戦から単勝1.1倍の断然人気に推されていた。結果は、後に中央重賞を3勝するコンゴウリキシオーを4馬身突き放す快勝であった。

 年が明けて、3歳となったディープ陣営が2戦目に選んだのは若駒Sで、ここでさらに圧巻の走りを見せる。道中は縦長の展開の最後方を追走。直線に入っても先頭とはかなりの差があったが、画面の外から驚異的な末脚で差し切り、最後は2着馬に5馬身の差をつけてみせた。レースの格としてはOP特別であるが、このレースで見せた衝撃の走りは、今でも語り草となっている。

 続く弥生賞も勝利し、ディープインパクトは牡馬3冠の第一関門、皐月賞に駒を進めた。同舞台で行われた弥生賞で少し苦戦していたように、ディープインパクトにとってトリッキーな中山コースは明らかに不向きなコースであった。その上、フルゲートである18頭立てのレースに出走するのも初めてで、その辺りを懸念する声も上がっていたが、それらは全て重箱の隅をつつくようなものであり、結果的には2馬身半差をつけての快勝で1冠を奪取した。

 続く牡馬3冠2戦目の日本ダービーでも、馬場の真ん中を真一文字に伸びて5馬身差の圧勝を果たす。夏を経て秋始動戦の神戸新聞杯を快勝すると、無敗の3冠制覇をかけて菊花賞に挑んだ。圧倒的な支持を集め、単勝オッズは元返しの1.0倍。レースはアドマイヤジャパンが完璧な立ち回りで抜け出したところを、1頭だけ別次元の伸びで捉えて勝利。シンボリルドルフ以来、史上2頭目となる無敗の3冠馬の誕生となった。

 同世代の馬相手に無傷の7連勝を果たしたディープ陣営は、次戦に有馬記念を選択した。初の古馬相手でも断然の1番人気に推されたが、今までの後方待機策から一転、先行策に打って出たハーツクライを捉えきれずに2着に敗戦。デビューからの連勝は7でストップした。

 しかし明け4歳となったディープインパクトは再び連勝街道を進み、阪神大賞典、天皇賞(春)、宝塚記念を勝利。その年の秋には日本馬初の悲願をかけて凱旋門賞に挑戦するも、3着入線に終わった。さらには、後に使用が禁止されている薬物が検出されたことにより失格となってしまった。失意の帰国となったディープインパクトだが、日本で輝きを取り戻す。海外帰りで万全とは言えない中でもジャパンカップを勝ち、引退レースとなる有馬記念でも断然の支持に応えて勝利した。その日の全レース終了後には中山競馬場で引退式が行われ、現役生活にピリオドを打った。

 引退後は種牡馬入りし、初年度産駒からG1を勝つなど、活躍馬を多数輩出した。2019年に17歳という若さで惜しまれながらこの世を去ったが、種牡馬生活の晩年になってもその影響力は衰えることはなく、翌年の2020年にはコントレイルが父と同じく無敗での牡馬三冠を達成。2023年には偉大な父サンデーサイレンスの産駒通算勝利数2749勝を超え、単独1位となった。残された産駒は現4歳世代が最後となったが、この先もその血筋は脈々と受け継がれていく。

(文●中西友馬)

1 2