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ハープスターやアーモンドアイなど。桜花賞で「大外一気」を決めた名牝中の名牝たち5選

text by 中西友馬

牝馬クラシック第1冠となる桜花賞。これまでこのレースを制した勝ち馬の数々が、ここを足掛かりに名牝への道を歩み出している。今回はそんな桜花賞の歴史の中から、鮮やかな追い込みで勝利を挙げた馬に注目。特に印象に残った5頭を、ピックアップして紹介する。

BuenaVista
ブエナビスタ

①2009年(勝ち馬ブエナビスタ)

 最初に取り上げるのは、2009年の桜花賞。この年の桜花賞は、分かりやすくブエナビスタ一色だった。のちの皐月賞馬、ダービー2着馬、菊花賞馬が顔を揃えた、いわゆる伝説の新馬戦こそ3着に敗れたが、その後3連勝。中でも、道中18頭立ての16番手ながら、危なげなく差し切ったように映った阪神JFなどは、まさに2歳馬離れしたレースぶりであった。

 桜花賞の単勝オッズは1.2倍で、単勝支持率は67.5%を記録。これは、これまで牝馬3冠を達成した7頭の桜花賞単勝支持率を上回り、21世紀に入ってからは現時点で最高値となっている。2番人気レッドディザイアの単勝オッズが既に14.4倍と、2番人気以降は全て10倍以上のオッズを示して、発走を迎えた。

 レースは、押してヴィーヴァヴォドカがハナを主張するも、その外からコウエイハートが並びかけてこちらが先手。ヴィーヴァヴォドカは2番手に控え、レッドディザイアは中団後方寄り。いつも通り出負け気味だったブエナビスタは、後方2番手で悠然と構えていた。3〜4角中間あたりでは早めに馬群の大外へと持ち出したブエナビスタであったが、距離ロスを嫌ってか4角では再び馬群の後ろへと進路をとって、最後の直線へと向かう。

 そのぶん直線の前半部分では前が壁になりそうな場面もあったが、残り400mあたりで再度大外に進路を取ると、一気に加速。前団との差はみるみるうちに縮まり、残り100mからは連れて抜け出したレッドディザイアとの一騎打ち。しかしこの争いも勢いがまったく違い、最後は鞍上の安藤勝己騎手が、手綱を緩めて内を見る余裕を見せての勝利。

 上がり3Fはもちろん最速の33秒3と、レース上がりを1秒6も上回る末脚を披露した。レッドディザイアとの着差は半馬身ながら、この時点では、それ以上の力差を感じさせての完勝であった。

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